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弁護士 丹澤 友佑(函館弁護士会所属)
慰謝料とは精神的な苦痛に対しての対価です。
同じような態様の交通事故で、同じような症状であっても、それによってどの程度苦痛を受けているかは人によって千差万別かもしれませんが、第三者や裁判所がそれぞれの被害者の精神的な苦痛を厳密に評価・計測することは困難です。
そこで、実務上は入通院の期間や、後遺障害の等級によって、おおよその慰謝料が決められています。
たとえば、
⑴骨折などのないむちうちの症状で半年通院した場合には約90万円の入通院慰謝料
⑵骨折して1ヶ月入院し、その後5ヶ月通院した場合には約140万円の入通院慰謝料
⑶後遺障害等級14級が認定された場合には110万円の後遺障害慰謝料
⑷後遺障害等級11級が認定された場合には420万円の後遺障害慰謝料
などとなっています。
ただし、上記に記載しているのはあくまで裁判の判決での相場であって、保険会社が交渉段階で提示してくる慰謝料額はかなり低額となっている場合がほとんどです。
また、被害者の方が保険会社にネット等で調べた裁判基準の慰謝料を弁護士に依頼せずにご自身で請求してもそのとおりには支払ってもらえないことが多いです。
保険会社から、慰謝料(示談)の提示があった場合には、署名押印をする前に一度弁護士に相談することをおすすめします。
現実には収入を得ていない専業主婦(夫)であっても、交通事故による怪我で家事労働に支障が出た場合、休業損害を請求することは可能です。
もっとも、会社の場合であれば、休業の証明書を書いてもらう等で欠勤を証明してもらえますが、家事にどの程度支障が生じたか、家事を休んだかどうかは証明がしにくいことが多いです。
そのため、保険会社との間で休業の日数や休業日額の金額や計算方法について争いになることは多々あります。
保険会社は、主婦の休業損害を認めて提示してくる場合でも、1日6100円の自賠責保険の定額で提示をしてくることがあります。
保険会社の提示金額より高額な請求をすることが可能な場合が多いので、示談金の提示があった際には、まず一度弁護士に相談することをおすすめします。
後遺障害とは、交通事故によって受傷した傷害が治癒したときに残存する障害が、医学的にその存在が認められるもので、その程度が自賠法施行令の等級のいずれかに該当するものになります。
そのため、痛みやしびれなどが残っていても、それが交通事故と因果関係が認められないのであれば、交通事故による後遺障害として賠償を受けることはできません。
また、レントゲンなどの画像や各種の検査での他覚的な所見が全くなく、被害者の訴える自覚症状に医学的に説明ができる裏付けがない場合には、医学的に後遺障害の存在が認められず後遺障害が認定されないことになります。
後遺障害を判定する時点の「治癒」についてですが、こちらも日常用語としては「治った」状態をイメージしてしまうためわかりにくいですが、この状態は「症状固定」とも言われます。
これは、医学的な面からは、これ以上治療を継続しても症状について大きな改善が見込めない状態を指します。
痛みやしびれなどが残っていても治療開始から既に半年程度経過していて、治療をしていても大きな改善が見られなくなってきた場合、医師から医学的に症状固定と診断されることになります。
症状固定になった場合、治療を継続しても症状が改善されない以上、以後の治療費については原則として賠償の対象となりません。
症状固定の時点で残存した障害が、自賠法施行令の等級のどれに該当する可能性があるかについては、専門的な判断になるので弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故による怪我の治療が終了し、症状固定したもののまだ痛みが残っている場合等には、後遺障害に該当する場合があります。
その場合、後遺障害の等級認定を受けて等級認定がされれば、後遺障害がない場合に比べて保険会社からの賠償金は増額されます。
等級認定を受けるときには、それまでも通院費用を立替えて支払ってくれていた加害者側の保険会社を通じて、後遺障害の事前認定の手続を受けることが一般的です。
保険会社は、損害保険料算出機構という機関に書類やレントゲン等の画像を提出して、機構の判断を基に等級認定を行います。
ですので、加害者の保険会社が対応してくれている場合には、その保険会社の担当者に後遺障害の申請をしたい旨を伝えれば手続は進んでいくのが一般的です。
この後遺障害等級認定の手続は書面主義で医師のこれまでの診断書、レントゲン等の画像や「後遺障害診断書」という特別な診断書の記載内容が非常に重要になってきます。
ところが、この後遺障害診断書の取得まで保険会社に任せてしまい、自分で後遺障害診断書の記載を確認しないと、例えば自覚症状の記載が不十分だったり、測定する必要のある可動域の記載がなかったりといった後遺障害診断書の記載の問題点を見落とすおそれがあります。
ですので、後遺障害診断書については、被害者の方ご自身で医師の方に書いてもらうことを依頼し、診断書を保険会社に送る前にはコピーを取って手元に残しておくのが肝要です。
また、後遺障害診断書を記載してもらったが不十分な点がないかや、認定される可能性のある後遺障害等級については、弁護士に一度相談するのがよいでしょう。
後遺障害等級認定を保険会社に任せずに、資料を自分で収集して直接自賠責の保険会社に認定・請求をする方法もあります。カルテや画像の取得等に費用や時間はかかりますが、弁護士費用特約を利用して弁護士に依頼する場合は実費として費用についても保険から支払われます。
後遺障害が認定されず非該当となった場合や、想定していたよりも低い後遺障害等級しか認定されなかった場合には、異議申立てを行うことができます。
後遺障害認定について、加害者の保険会社を通じた事前認定手続で行っていた場合には、保険会社に異議申立てする意向を伝えた際には、定型の異議申立書が送られてきて、記載して返送するだけで異議申立ての手続きを進めてくれる場合があります。また、直接自賠責の保険会社に異議申立書を提出することもできます。
異議申立てがされた場合、外部の専門家が審議に参加する審査会が開かれます。
損害保険料算出機構が公開しているデータによれば異議申立ての結果、等級変更が認められている確率はここ数年は約1割前後で推移しています。
単に異議申立てをしただけでは等級変更が認められる可能性が非常に低いことがわかります。
したがって、異議申立てをする際には、等級認定がされなかった理由を分析し、目指している等級の認定に必要な医学的資料を集めるなど、十分な準備をする必要があります。
異議申立て自体は何度でも利用可能ですので、異議申立てをしたが認められなかった場合に、再度異議申立てをすることは可能です。
もっとも、異議申立てをしてから結果が出るまで数ヶ月は通常時間を要しますし、知識のない方が異議申立てでも等級変更が認められなかった理由を正確に分析することは困難です。
後遺障害等級認定に不満がある場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故の被害者の方で身体に最も多く現れる症状はいわゆるむち打ち症です。
これは主に追突の際の衝撃等により頸部が振られたことによって、頸部や肩甲部、上肢等に痛みやしびれをもたらすもので、病院の診断書では、頸部捻挫、頸部挫傷、外傷性頚部症候群などと診断名が付されます。
むち打ち症に伴って、頭痛や吐き気、めまいや耳鳴り等の症状が生じている場合には、バレリュー症候群という診断名がつくこともあります。
むち打ち症で認定される後遺障害等級としては、12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」とされる可能性もありえなくはないですが、極めて稀で例外的なケースにとどまるため、ここでは14級9号の「局部に神経症状を残すもの」を想定して説明します。
14級9号の認定の基準については具体的には、受傷時の状態や治療の経過などから連続性・一貫性が認められる、医学的に説明可能な神経系統の症状であって、単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるもの、と考えられています。
したがって、極めて低速で追突された場合などの事故の態様が軽微なものである場合や、事故から通院開始まで日数が空いていたり通院頻度が極めて少ない場合、治療開始から症状固定までの期間(治療期間)が短い場合は、後遺障害認定にマイナスに働きやすく、非該当とされてしまう可能性が高くなります。
また、症状の証明については、医師の診断書やカルテの記載が極めて重要になりますので、事故直後の痛みやしびれだけではなく、治療中の痛みやしびれ、首などの関節の動かしにくさについては必ず全て医師に伝えてカルテに記載してもらうことが重要です。
そして、頸部の可動域に問題があれば可動域を測定してもらったり、ジャクソンテストやスパーリングテストといった神経症状の裏付けとなる検査結果が陽性の場合にも記載してもらうことが重要です。
痛みやしびれの症状は日によって軽くなったり天候や気温によって増悪したりするので、診察日だけたまたま痛みが和らいでいた場合でも、医師に軽率に「調子がいい」「楽になった」などと説明するのではなく、ある程度長期的な症状を伝えることが肝要です。
むち打ち症で治療が終了し、後遺障害認定についてお悩みの場合は弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故による怪我で、まだ病院への通院を続けていて痛みもあるのに、加害者の保険会社が治療費の打ち切りを打診してくる場合があります。
日本ではそもそも保険会社が被害者の治療費を必ず立替えなければいけないというルールもないため、治療費の打ち切りに対する対処は非常に難しい問題です。
対処としては大まかに3パターンが考えられますが、怪我の内容や事案の内容等によって異なる対処が必要な場合がありますのでご留意ください。
①医師に治療継続の必要性について説明してもらう
主治医の先生に、もう症状固定の時期であるのか確認してみてください。
もし先生が「症状はもう少しよくなるのでまだ通院した方がいい」とか、「症状固定はまだです」とおっしゃった場合には、その旨を保険会社の担当者に伝えたり、場合によっては診断書等の書面に書いてもらうなりして保険会社に治療費の打ち切りの再考を促します。
なお、ケースによっては治療費の打ち切りの打診の前に、保険会社から主治医に対して文書で症状固定時期について照会して既に症状固定時期である旨回答を得てしまっている場合もあります。
②自費で治療を継続し、後日保険会社に治療費を請求する
日本では保険会社が治療の終了まで被害者の治療費を立替えなければいけないというルールはないため、医師が治療継続の必要性を認めても、保険会社が一方的に治療費の支払いを打ち切ってくる場合があります。
その場合、健康保険を使って自費で通院し、後日保険会社にかかった治療費を請求するという対応があります。
ただし、加害者の保険会社は、交渉しても自費で通院した部分については支払わないという場合も多いので、その場合は結局治療費について諦めるか、訴訟を提起して争うことになります。
訴訟提起した場合にも、相手方から症状固定時期を争われ結果として認められないという場合もあり得るので、必ず打ち切り後の治療費の支払いが認められるとは限らないことに注意が必要です。
③示談や後遺障害申請に移行する
医師から症状固定を言われた場合や、自費での通院が困難であったり、早期に解決して目処をつけたい場合には、その時点で示談の手続きを進めて行くことが考えられます。
示談に進むことを保険会社に伝えると、保険会社から示談金の提示がされることが一般的です。
提示された保険金額が妥当なものかどうかについては弁護士に相談することをおすすめします。
また、ある程度の後遺症が残っている場合には、医師に後遺障害診断書を記載してもらい、後遺障害等級の認定の手続きを進めることも考えられます。
もっとも、怪我の内容や症状によっては、治療期間が短いことが後遺障害等級認定にマイナスの方向に働くこともあるので注意が必要です。
交通事故における過失割合については、「民事交通事故訴訟における過失相殺率の認定基準」という、基準となる本があります。
この本には様々な事故類型について、過失割合を何対何にすべきか一覧表として網羅的に載っています。
保険会社も通常この本を参考にして過失割合を提示してきますので、過失割合について根拠を求めればこの本の該当する類型のページのコピーが送付されてくることもあります。
もっとも、この本には原則の過失割合の他に修正要素も載せられています。
例えば、どちらかの運転者に携帯電話を操作しながら運転したような著しい過失があった場合には、過失が増える方向に働いたり、夜間に歩行者を轢いてしまった場合には運転者側の過失が減る方向に働いたりといったことです。このような修正要素について、保険会社が加害者側に不利な修正要素を的余湯しないで提示してきている場合もあります。
また、そもそもお互いの事実の認識に違いがあって、ドライブレコーダーなどの証拠もないなど、客観的な事故態様について争いが大きい場合には、この本の中で当てはめる事故類型自体が違う場合もあり得ます。
過失割合の評価の問題ではなく、このような事実のレベルで争いがある場合について折り合いがつかない場合には、訴訟で解決を図るしかない場合もあります。
交通事故によって被害者の生命や身体に損害が生じているは人身事故として届け出をするのが原則です。
しかし、事故直後には身体の痛みを感じなかったり、加害者の保険会社から言われるがままに人身事故としての届出を行わず、物損事故として処理されてしまうことがままあります。
停車中の自動車に加害者の車両が追突するなど一方が100%の責任を負うことが明らかな場合でない限り、事故状況や過失の割合について争いが生じるケースは少なくありません。
そのような場合、現場で警察官が事故状況を確認し、ブレーキ痕や視認状況を調査するなどした上で作成される実況見分調書は、事故当事者の過失割合を判断する重要な証拠となります。
人身事故として届出せずに物損事故として処理された場合には、この実況見分調書が作成されず、簡易な物件事故報告書が作成されるだけですので、過失割合について有利な主張をすることが困難になる場合があります。
過失の割合について問題とならない場合でも、原則として人身事故の届出をするべきです。
人身事故の届出をしなかった場合、交通事故証明書が取得できなくなりますが、自賠責保険に請求する際に、人身事故の届出をせずに交通事故証明書を取得できなかった理由を説明する書面(事故証明書入手不能理由書)においても、その理由の例示として「受傷が軽微で、検査通院のみであったため」、「受傷が軽微で、短期間で治療を終了した(もしくは終了予定)ため」、「事故当事者の事情」とされています。
交通事故被害に遭って相当期間通院する怪我を負った場合に、人身事故の届出をしないことが例外的なごく場合であることがよくわかると思います。
特に怪我がむちうち症の場合などに、「受傷が軽微で、短期間で治療を終了した(もしくは終了予定)ため」にチェックしたことで、治療費を早期に相手方保険会社から打ち切られてしまったり、治療の必要性や症状固定の時期等について後から争われることもあります。
他方で加害者の側は、人身事故にならないことで、刑事処分を免れたり、違反点数が抑えられたりする大きなメリットがあります。
人身事故にしなかったことによって、被害者に支払われる示談金の額が増額されるということもまずありませんので、被害者にとって人身事故にあえてしないメリットはなく、かえってデメリットなのでやはり人身事故の届出をするのが原則と言えます。
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